万博でシンガポールの空に夢を託す
2025大阪万博のシンガポール館には、自分の夢をタブレットに手書きしてそれをスワイプすると、文字が空間に飛んで行って、最後にあるドーム状の大ホールの天井に、流れ星のように映し出されるという演出がありました。

万博だけに、周りの人たちは世界平和とか、地球環境保護とか、人類愛とか世界目線の夢を書いておられたりしましたが、私が迷うことなく書いた夢は「ピンピンコロリ」。誰も見ていないと思いますがちょっと恥ずかしい。そんな我が事の夢をわざわざ演出していただいて「ほんまに堪忍」です。
でも「ピンピンコロリ」は本当に夢です。小さい頃から「一生のお願い」はあちこちで多用してきましたが、ピンピンコロリは本当に最後の、まさに「一生のお願い」です。
健康寿命をできるだけ延ばして、しんどくて周りに迷惑をかける期間をできるだけ短くして逝きたいと心から願っています。
父はピンピンコロリといってよい最後でした
そういう点で実父は立派でした。父の旅立ちの始まりは83歳で罹患した大腸がんでした。血便が出たため検査に行くと大腸がんのステージⅡと診断されました。浸潤がなく他の臓器への転移もなかったため、がんを切除するだけで済みました。手術後、再発防止の抗がん剤治療や経過観察の通院をしましたが、ずっとピンピンしていました。
1年後、念のためPET検査を受けたところ、すい臓に反応がみられました。その後の精密検査で、すい臓がんのステージⅢと診断されました。さすがに今回は切り貼りできる状況ではなく、化学療法となりましたが、そこから亡くなるまで10か月でした。抗がん剤治療でつらかった時期もありましたが、8か月目までは、自分で食事や用を足すことができていたので、自宅で母にあまり迷惑をかけることなく暮らしていました。
終末期も病院で静かに眠ってばかりでした。死ぬ間際まで食事もとれていたそうです。本人の希望により最後は自宅に帰ってきましたが、ほどなく耐えがたい痛みが襲ってきて、身の置き所がなくなり、「もういい」と声を振り絞って救いを求めた段階で、鎮静剤を処方してもらったら、すうっと息を引き取りました。周りで見ていた私たちが気づかなかったぐらいです。
悲しさの一方で、本当にうらやましい最後でした。
抗がん剤治療の是非
残念ながら、今のところ抗がん剤治療が効いてよくなった人が私の周りにはいません。父、義父、岳父を含め、みな抗がん剤治療の効果が認められず、治療をやめたら2、3か月で亡くなっていきました。
抗がん剤治療をしていなかったらもっと早くに亡くなっていた、抗がん剤治療している期間分だけ延命ができたといえばそうなのかもしれませんが、どの父も治療期間中はかなりしんどくて、家から出られない生活になっていました。抗がん剤治療をしても、効かない場合がそれなりにあるとするなら、残り少なくなった時間を、しんどい抗がん剤治療で使ってしまうのが果たしてよいのかどうか、今のところ疑問を持っています。でも、がんになった時に、標準治療となっている抗がん剤治療を受けないと、治療する方法がなくなってしまい、お医者さんに見放されないかという心配もあります。
がんよりは心疾患の方がよい?
先日、野球解説者の張本勲さんがお亡くなりになりました。訃報を聞いた時、「あれ、この前サンデーモーニングのスポーツコーナーに出ていたのに?」とまず思いました。しばらく死因は公表されませんでしたが、どうやら自家用車の運転席で倒れておられたそうです。車の運転中の突然死というのは、第三者を巻き込む恐れがあるので、避けたいところですが、86歳で直前までテレビに出演できるぐらいお元気でしたから、この死に方はうらやましく思いました。
がんで闘病して死ぬよりは、前もって症状がなかった心臓系疾患で突然死を迎える方が、ピンピンコロリ感が強くてちょっと魅力を感じます。よくご高齢の方が入浴中になくなったということを聞きますが、これにも実はちょっと魅力を感じていたりします。
ただ、突然死してしまうと、本人しかわからないことが山積したりして後処理に困ることになるでしょう。突然死を願うならば、前もって身の回りの整理をしておく必要があります。
それよりも、できることならば尊厳死が認められる社会になってくれればいいなと願っています。遠からず死ぬにもかかわらず、しんどい治療を続けて周りに迷惑をかけるよりは、スッと楽に死を迎えることができたらどんなにいいか。死を迎えることは今のところ恐れていませんが、死の痛みと戦うことには恐怖感があります。これをなくせるなら、どんなに安堵できることか。
現実問題として尊厳死が進むのではないか
先日、身寄りのない高齢者が自宅で病気になって、救急車を呼んでも受け入れてくれる病院が見つからない、というテレビの特集がありました。こういった方が入院をすると、身の回りの世話をしてくれる人が誰もおらず、看護師さんたちの手間暇ばかりがかかることになってしまうので、病院側が受け入れを拒むことが増えてきているようです。
独身であったり、配偶者がいても子どもがいなかったりして、最終的に身寄りのいない真の「おひとりさま」になるであろう方がどんどん増えてきています。その反動として人口減少が毎年90万人という予想以上のペースで進み、それにあわせて医療従事者も減る一方です。
テレビに出演されていた「おひとりさま」は、誰も助けてくれる人がおらず「生きていても仕方がない。もう死にたい。」と話しておられました。
こういった医療機関に入れない「おひとりさま」が、家で孤独死することが多発するようになると社会問題になります。身寄りがなく、国もサポートができない以上、現実的な選択として尊厳死を認める方向に進まざるをえないのではないでしょうか。もしこれが実現すれば、結果的に医療予算不足、年金財政の破綻、介護事業の行き詰まりなど、高齢化社会が抱える超難題の解決にも寄与することになるでしょう。
そうなったら、私も便乗して、ピンピンコロリにできるだけ近い状態で尊厳死を選択して最後を迎えたいと思います。
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2026年10月12日
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